日本のクマ問題について、私が考えること

野生動物管理 ・ 著:Frank Schulz

待ち伏せ猟、高所からの狩猟、誘引餌
ヨーロッパの狩猟手法を日本のクマ管理に応用できるか

山道に立つ「熊出没注意」の看板

ヨーロッパの経験を考える際には、野生動物管理の組織や制度だけでなく、具体的な狩猟方法についても検討する必要がある。

その一つが、待ち伏せ猟(アンジッツ)、高い位置に設置した狩猟用の待機施設を利用する方法、誘引餌を用いる方法、そして一定の条件下での夜間の狩猟である。

ヨーロッパの多くの狩猟地域では、待ち伏せ猟や高所に設置した狩猟用施設が、野生動物の観察や、規制に基づく狩猟の手法として定着している。これらの方法を用いることで、野生動物を継続的に観察し、活動パターンへの理解を深め、一定の条件下で計画的な対応を検討することができる。

こうした経験を日本のクマ猟に応用できるかどうかは、対象となるクマの種類、地形や森林環境、そして法的な条件を踏まえて検討しなければならない。

待ち伏せ猟(Ansitzjagd)・高所からの狩猟(Hochsitz)―事後対応だけでなく、計画的な観察を

日本では、問題となるクマへの対応が、目撃情報や差し迫った危険をきっかけとして行われることが多い。

これを補う方法として、クマとの遭遇や被害が繰り返される地域を選び、継続的かつ体系的な観察を行うことが考えられる。その一環として、ドイツ語で「Ansitzjagd(アンジッツヤークト)」と呼ばれる待ち伏せ猟を、計画的な管理プログラムの中で検討することも可能だろう。

高所の観察・狩猟用施設(Hochsitz)の前を歩く狩猟者

この方法で用いられる「Hochsitz(ホーホジッツ)」とは、周囲を見渡しながら野生動物を観察・捕獲するために設けられた、高所の観察・狩猟用施設である。条件が整えば、こうした施設は周囲の見通しを確保し、野生動物の観察を容易にする。また、特定の地域がどのように利用されているか、クマがどのような活動を繰り返しているかについて、情報を集めることもできる。

この方法の価値は、対象を絞った介入の可能性だけではない。地域の状況について新たな知見が得られることにもある。

どの場所が繰り返し利用されているのか。クマは一日のうち、どの時間帯に確認されるのか。人間の生活圏にある食料を求めて繰り返し現れているのか。それとも、本来の生息地を一時的に移動しているだけなのか。

こうした情報は、地域ごとの問題発生地点や危険性を評価するうえで役立つ。自動撮影カメラや統一された目撃記録を組み合わせれば、個々の観察結果を、より大きな状況の中で評価できる。

ただし、Ansitzjagd(待ち伏せ猟)やHochsitz(高所の観察・狩猟用施設)が、常に最も安全で効果的な方法になるとは限らない。

日本の森林は密度が高く、見通しを確保しにくい場所も多い。急斜面、植生の変化、登山道や住宅地との距離なども考慮しなければならない。そのため、高所に設ける施設を含め、観察や管理に用いる場所の適否については、現地の条件に基づく専門的な判断が必要となる。

森の中に設けられた高所の観察・狩猟用施設

誘引餌・ルーダーン、一つの可能性

誘引餌、あるいはルーダーン(Ludern)と呼ばれる方法も、検討対象となり得る。

これは、動物を特定の場所に誘引する目的で、限られた量の餌を設置する方法である。ヨーロッパの一部の狩猟制度では、特定の動物種を対象に、野生動物の観察や個体数管理を補助するために利用されている。

こうした方法は、高所に設置した狩猟用施設やツリースタンドなどと組み合わせ、昼間だけでなく夜間の観察にも利用されることがある。

クマは知能が高く、環境への適応能力に優れた雑食性の動物である。人工的な餌場で定期的に食料を得られるようになると、その地域の利用の仕方が変わる可能性がある。そのため、仮にこの方法を検討するのであれば、場所を一定期間ごとに変更することも含め、動物の行動に及ぼす影響を慎重に評価する必要がある。

私は、適切な条件が整えば、この方法によって一定数のクマを特定の地域に誘引し、その地域内にとどまる傾向を強められる可能性があると考えている。

それによって、クマが餌を求めて人の住む地域まで移動する必要性が部分的に減り、対象を絞った捕獲・駆除が可能になるのではないか、という考え方である。

ただし、これは検証すべき仮説であり、実際にそのような効果が得られるかどうかは、科学的な調査によって確かめる必要がある。

肉食獣の場合、一般的な誘引餌として少量の肉、内臓、魚などが用いられることが多い。一方、クマは糖分や脂肪分の多い食物にも強く引き寄せられる。

海外のクマ管理の事例では、次のような食品が誘引物として使われることがある。

  • 賞味期限切れのドーナツ、菓子類、パンなど。
  • ハチミツ、ピーナッツバター、糖蜜、オートミールなど。
  • 食用油脂、揚げ物に使った油、動物性脂肪など。脂肪を樹木に塗り、においを広げる方法もある。
  • 肉や魚の残さ。
鎖で固定した金属製の容器と、その近くを歩くクマ

ルーダー・プラッツという考え方

クマは非常に力が強く、餌をその場から持ち去ってしまうこともある。そのため、海外の事例では、重い金属製の容器を鎖などで固定し、クマが簡単に餌を持ち去れないようにする方法が用いられることがある。

容器には小さな開口部を設け、クマが容器を動かしたり、工夫したりしながら餌を取り出す構造にする場合もある。

こうした仕組みの目的は、クマが一定時間その場所にとどまるようにすることだ。その間に、観察者が個体の大きさや性別などを確認できる可能性がある。

ただし、実際にこのような設備を設置・運用する場合には、動物福祉、衛生、周辺環境への影響、他の野生動物への影響、そして地域の法令を十分に考慮しなければならない。

また、誘引餌の設置は、無制限の餌付けと混同してはならない。

特に日本では、クマが住宅地や農地に繰り返し出没している。新たな餌場を設けることで、地域の管理目標に合致した効果が得られるのか、それとも人間の食料に依存する行動や、人里への接近を助長してしまうのかを、事前に慎重に検討する必要がある。

したがって、誘引餌を利用するのであれば、対象地域と目的を明確に限定し、科学的な評価を伴う管理措置として検討すべきである。法的に認められていることも当然の前提となる。

さらに、目標とする効果が、誘引餌を使わずに達成できないかも検討する必要がある。

クマの管理で重要なのは、ある対策が問題行動を本当に減らすのか、それとも将来にわたってクマを人間の生活圏に引き寄せる新たな要因を生み出すのかを見極めることである。

このような対策を検討する場合には、少なくとも人里ではなく、森林内の管理区域に限定するという考え方も必要だろう。ただし、森林内であれば安全である、あるいは問題が起こらないというわけではない。

夜間の狩猟――可能性はあるが、現状の日本では大きな制約がある

もう一つの検討対象は、夜間の狩猟である。

クマは活動時間を変化させることがあり、地域によっては夕方から夜間にかけて活動が活発になる場合もある。そのため、昼間の観察だけでは、特定の個体の行動を十分に把握できないことがある。

専門的な野生動物管理では、夜間の活動パターンを体系的に調査することにも意味がある。サーマルカメラなどの観察機器や自動撮影カメラを活用すれば、クマが特定の地域をどのように利用しているのかを、より詳しく把握できる可能性がある。

月明かりの下、高所の施設から森を見渡す狩猟者

ただし、夜間にクマを観察することと、暗闇の中で銃器を使用することは、明確に区別しなければならない。

夜間の銃器使用には、狩猟者の高度な射撃訓練に加え、対象動物を確実に識別する能力、周囲の状況を評価する能力、関係者間の連絡体制、そして無関係な第三者の安全を確保するための厳格な条件が求められる。

日本では、原則として日没から日の出までの銃猟は禁止されている。例外は法律で定められた条件を満たす場合に限られる。また、行政が実施する一部の捕獲措置については、夜間の対応に関する特別な手続きが設けられている。

さらに、2025年9月からは、一定の条件の下で、市街地などに出没した危険な動物に対応する「緊急銃猟」の制度が施行されている。ただし、この制度は一般的な夜間狩猟を自由に認めるものではない。

日本で夜間の銃器使用を将来的に検討するのであれば、まず、どのような状況で追加的な安全上の利点や、明確な管理上の効果が得られるのかを具体的に検証する必要がある。

クマが夜間に活動しているという事実だけでは、夜間の銃器使用を正当化する理由にはならない。

また、夜間の対応を本格的に導入するのであれば、暗視装置と赤外線装置などの必要な機材の整備も検討しなければならない。それに合わせて、射撃訓練の専門化・高度化も必要になるだろう。

高所の施設から双眼鏡で周囲を観察する狩猟者

さらに、日本の銃所持制度における、いわゆる「10年ルール」についても、専門的な野生動物管理に必要な能力や訓練をどのように確保するかという観点から、議論の対象とする余地があるのではないだろうか。

夜間の狩猟中にクマに襲われるリスクを減らすため、高所に設置された狩猟用施設(Hochsitz)には、必ず2人1組で入るべきである。

さらに、クマが施設内に侵入できないよう、構造面でも十分な対策を講じる必要がある。

なお、夜間におけるクマへの対応を検討する場合、散弾銃だけでは対応できない課題もある。必要な装備、使用可能な銃器、射撃能力、法的条件を一体として考える必要がある。

複数の方法を組み合わせる。ただし、目的は明確にする

待ち伏せ猟、高所からの観察・狩猟、誘引餌、夜間の対応は、それぞれ独立した方法としてではなく、地域の管理目標との関係で評価する必要がある。

例えば、地域の観察体制を整え、自動撮影カメラを活用し、繰り返される被害や危険な遭遇を記録することで、どのような対策が適切かを検討できる。

実際に狩猟による介入が必要となる場合には、法令を遵守し、十分な訓練を受けた人材が、明確な安全条件の下で対応しなければならない。

ヨーロッパの経験から学べるのは、ある方法が別の動物種で効果を上げているからといって、クマにも適しているとは限らないということだ。

その方法が対象となる動物種、生息環境、そして達成したい目的に照らして、本当に有効であるかを確かめなければならない。

日本では、まず特定の地域を選び、科学的な調査を行いながら、適切な方法を検証していくことが望ましい。

評価にあたっては、危険な遭遇が減少したか、問題行動が少なくなったか、そして地域住民の安全が向上したかを重視すべきである。

ヨーロッパの狩猟経験の本当の価値は、特定の狩猟方法そのものにあるのではない。観察、専門知識、必要に応じた介入、そして責任を一体として考える姿勢にある。
針葉樹の森を歩く狩猟者

Waidmannsheil!
Frank Schulz
EDELWEISS Outdoor & Hunting